理事長 挨拶
高専の次なる50年に向けて
(平成24年1月 新年のご挨拶)

理事長
林 勇二郎
平成24年の新春を迎えるにあたり、東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故で被災された方々に、国立高専機構を代表してあらためてお見舞いを申し上げます。
高専は、産業界の強い要請により昭和36年に創設され、爾来、本科の5年一貫教育を基本とし、大学編入や専攻科などの組織制度を整え、30万人を超える実践的で創造性のある高度技術者を育成してきました。高専の来し方は、我が国の科学・技術、産業・経済、さらには生活・文化の発展に少なからず貢献した50年であったと言えます。
人類は今、地球温暖化をはじめ多くの深刻な問題に直面し、持続的な発展が問われています。昨年3月11日に発生した災害は、自然と人為が複合する形で多くの人命と社会資産を奪い、国土やエネルギーの基盤に壊滅的な打撃を与えました。東北地方の復旧・復興は我が国の再生に向けた喫緊の課題であり、国も地方も、産も学も、さらには国民の一人ひとりまでが国の将来について責任をもった行動が求められています。
東北地域の高専は、大きな被害を受けながらも、仙台高専および福島高専を中心に、それぞれ「東北地域の産業復興を行う技術者人材育成」および「原子力に依存しないエネルギーと安全・安心な社会を目指す地域復興」の事業に取り組んでいます。また、香川高専はじめとした全国の土木系13高専は、老朽化が進む橋梁の市町村管理の支援に乗り出しています。そこでは、道路や橋梁などの国の動脈インフラと地方の抹消インフラを、災害時にどのように連携確保し維持管理するかが課題であり、機構と土木研究所の連携プロジェクトへと発展しています。さらに、高専機構は独立行政法人産業技術総合研究所と協定を締結することで、産総研が掲げる「オープンイノベーション機能の強化」を戦略に、51の高専の「地域ネットワーク」を広域的に展開し、知財と人材をベースにした地域イノベーションの創出を目指しています。
しかし、この度の大震災の我々へのメッセージは、より根源的なものであったように思えます。 "信頼できる技術は何か"、"社会のための科学とは何か"、さらに言えば "人類の持続的発展に向けて何をせねばならないのか"。地震も津波も未曾有のスケールではあったとは言え、確かなことは、どんなに堅牢な人工物もどんなに精緻な人工システムも、自然の前では如何にも脆弱であるということです。CO2対策の切り札であったはずの原子力が深刻な環境破壊を引き起こした背景には、科学技術に対する過信がなかったとは言えません。また、福島原発の事故やタイの洪水被害が世界に及ぼした影響からは、産業構造や経済市場ばかりではなく、科学技術の政策までがグローバル化していることを認識させられます。
高専はこれまで、基礎科学を重視するとともに地域と産業界と連携し、先端的な技術開発と実践的で創造性のある技術者の育成にとりくむことで高い評価を得てきました。この基本姿勢に変わりはありませんが、地方や国を取り巻く国際情勢や科学技術が問われる社会的責任については真摯に受けとめねばなりません。次なる50年に向けて改革に取り組んでいる高専ですが、高度化のキーワードは、地域を重視したグローバルな展開であり、先端技術と持続的な発展であり、それらをベースとした人材と知財のイノベーションです。
このような高専を、よろしくご支援くださるようお願い申し上げ、年頭のご挨拶といたします。
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