独立行政法人国立高等専門学校機構における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領 理事長裁定 制定 平成28年3月24日 (目的) 第1条 この対応要領は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき,また,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定。)に即して,法第7条に規定する事項に関し,独立行政法人国立高等専門学校機構(以下「機構」という。)の役員及び職員(非常勤の役員及び職員を含む。以下「役職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めたものである。 (定義) 第2条 この対応要領において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障害者 障害者基本法(昭和45年法律第84号)第2条第一号に規定する障害者,即ち,身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害の社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものとし,機構における教育及び研究,その他機構が行う活動全般において,そこに参加する者すべてとする。 二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。 (障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止) 第3条 役職員は,法第7条第1項の規定のとおり,その事務又は事業を行うに当たり,障害を理由として,障害者に対し,障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり,役職員は,別紙に定める留意事項に留意するものとする。 (合理的配慮の提供) 第4条 役職員は,法第7条第2項の規定のとおり,その事務又は事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。これに当たり,役職員は,別紙に定める留意事項に留意するものとする。 (監督者の責務) 第5条 障害を理由とする差別の解消を推進するため,機構に監督者を置き,機構本部においては理事長をもって充て,学校においては校長をもって充てる。 2 監督者は,次の各号に掲げる事項に留意して障害者に対する不当な差別的取扱いが行われないよう注意し,また,障害者に対して合理的配慮の提供がなされるよう努めなければならない。 一 日常の執務を通じた指導等により,障害を理由とする差別の解消に関し,監督する役職員の注意を喚起し,障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 二 障害者から不当な差別的取扱い,合理的配慮の不提供に対する相談,苦情の申出等があった場合は,迅速に状況を確認すること。 三 合理的配慮の必要性が確認された場合,監督する役職員に対して,合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 3 監督者は,障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には,迅速かつ適切に対処しなければならない。 (懲戒処分等) 第6条 役職員が,障害者に対し不当な差別的取扱いをし,又は過重な負担がないにも関わらず合理的配慮の不提供を繰り返した場合には,その態様等によっては,職務上の義務に違反し,又は職務を怠った場合等に該当し,懲戒処分等に付されることがある。 (相談体制の整備) 第7条 監督者は,役職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他の関係者からの相談に的確に対応するため,相談窓口を設置し,これを公表するものとする。 2 前項の相談窓口に寄せられた相談等は,相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り,以後の相談等において活用するものとする。 3 前項の窓口については,必要に応じ,充実を図るよう努めるものとする。 (研修・啓発) 第8条 障害を理由とする差別の解消の推進を図るため,役職員に対し,必要な研修・啓発を行うものとする。 2 監督者は,役職員に対して,障害の特性を理解させ,障害者へ適切に対応するために意識の啓発を図るとともに,新たに役職員となった者に対して,障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために,研修を実施するものとする。 3 理事長は,新たに監督者となった者に対して,障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために,研修を実施するものとする。    附 則(平成28年3月24日 制定)  この要領は,平成28年3月24日から施行する。 別紙 独立行政法人国立高等専門学校機構における障害を理由とする 差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方 法は,障害者に対して,正当な理由なく,障害を理由として,財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する,障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより,障害者の権利利益を侵害することを禁止している。 ただし,障害者の事実上の平等を促進し,又は達成するために必要な特別の措置は,不当な差別的取扱いではない。したがって,障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置),法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや,合理的配慮を提供等するために必要な範囲で,プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは,不当な差別的取扱いには当たらない。 このように,不当な差別的取扱いとは,正当な理由なく,障害者を,問題となる事務又は事業について,本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 第2 正当な理由の判断の視点 正当な理由に相当するのは,障害者に対して,障害を理由として,財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり,その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。正当な理由に相当するか否かについては,具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことのないよう個別の事案ごとに,障害者,第三者の権利利益(例:安全の確保,財産の保全,損害発生の防止等)及び機構の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み,具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。 役職員は,正当な理由があると判断した場合には,障害者にその理由を説明し,理解を得るよう努めなければならない。 第3 不当な差別的取扱いの具体例 不当な差別的取扱いに当たり得る具体例は以下のとおりである。なお,第2で示したとおり,不当な差別的取扱いに相当するか否かについては,個別の事案ごとに判断されることとなる。また,以下に記載されている具体例については,正当な理由が存在しないことを前提としていること,さらに,それらはあくまでも例示であり,記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 (不当な差別的取扱いに当たり得る具体例) ○ 障害を理由に学校への入学の出願の受理,受験,入学,授業・実験・実習や研究指導,課外活動,入寮,式典参加を拒むことや,これらを拒まない代わりとして正当な理由のない条件を付ける。 ○ 試験等において合理的配慮の提供を受けたことを理由に,成績評価において差を付ける。 ○ 障害を理由に窓口対応を拒否する。 ○ 障害を理由に対応の順序を劣後させる。 ○ 障害を理由に書面の交付,資料の送付,パンフレットの提供等を拒む。 ○ 障害を理由に説明会,シンポジウム等への出席を拒む。 ○ 事務・事業の遂行上,特に必要ではないにも関わらず,障害を理由に,来訪の際に付添い者の同行を求めるなどの条件を付ける。 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において,「合理的配慮」は,「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し,又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって,特定の場合において必要とされるものであり,かつ,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。  法は,権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ,行政機関等に対し,その事務又は事業を行うに当たり,個々の場面において,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,社会的障壁の除去の実施について,合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は,障害者が受ける制限は,障害のみに起因するものではなく,社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり,その実施に伴う負担が過重でないものである。  合理的配慮は,機構の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし,必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること,障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること,事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。 2 合理的配慮は,障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり,多様かつ個別性の高いものであり,当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ,社会的障壁の除去のための手段及び方法について,「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し,代替措置の選択も含め,双方の建設的対話による相互理解を通じて,必要かつ合理的な範囲で,柔軟に対応がなされるものである。さらに,合理的配慮の内容は,技術の進展,社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては,障害者の性別,年齢,状態等に配慮するものとする。  なお,合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合,障害者との関係性が長期にわたる場合等には,その都度の合理的配慮の提供ではなく,後述する環境の整備を考慮に入れることにより,中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明に当たっては,具体的場面において,社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか,点字,拡大文字,筆談,実物の提示や身振りサイン等による合図,触覚による意思伝達など,障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。  また,障害者からの意思表明のみでなく,知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には,障害者の家族,介助者等,コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。  なお,意思の表明が困難な障害者が,家族,介助者等を伴っていない場合など,意思の表明がない場合であっても,当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には,法の趣旨に鑑みれば,当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど,自主的な取組に努めなければならない。 4 合理的配慮は,障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化,介助者等の人的支援,情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として,個々の障害者に対して,その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって,各場面における環境の整備の状況により,合理的配慮の内容は異なることとなる。また,障害の状態等が変化することもあるため,特に,障害者との関係性が長期にわたる場合等には,提供する合理的配慮について,適宜,見直しを行うことが重要である。 5 機構がその事務又は事業の一環として実施する事務を事業者に委託等する場合は,提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう,委託等の条件に,対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めなければならない。 第5 過重な負担の基本的な考え方 過重な負担については,個別の事案ごとに,以下の要素等を考慮し,具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。 役職員は,過重な負担に当たると判断した場合は,障害者にその理由を説明し,理解を得るよう努めなければならない。 ○ 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的,内容,機能を損なうか否か) ○ 実現可能性の程度(物理的・技術的制約,人的・体制上の制約) ○ 費用・負担の程度 第6 合理的配慮の具体例 第4で示したとおり,合理的配慮は,具体的場面や状況に応じて異なり,多様かつ個別性の高いものであるが,具体例としては,次のようなものがある。 なお,記載した具体例については,第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること,また,これらはあくまでも例示であり,記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要がある。 (物理的環境への配慮の具体例) ○ 段差がある場合に,車椅子利用者にキャスター上げ等の補助をし,又は段差に携帯スロープを渡す。 ○ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。 ○ 目的の場所までの案内の際に,障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり,前後・左右・距離の位置取りについて,障害者の希望を聞いたりする。 ○ 障害の特性により,頻繁に離席の必要がある場合に,会場の座席位置を扉付近にする。 ○ 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があった際,別室の確保が困難であったことから,当該障害者に事情を説明し,対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 ○ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し,役職員が書類を押さえたり,バインダー等の固定器具を提供したりする。 ○ 災害や事故が発生した際に,障害者本人に対し直接,知らせたり誘導をしたりすること。 (意思疎通の配慮の具体例) ○ 筆談,読み上げ,手話など多様なコミュニケーション手段を用いる。 ○ 意思疎通が不得意な障害者に対し,絵や写真カード,コミュニケーションボード,タブレット端末等のICT機器を活用するなどして意思を確認する。 ○ 駐車場などで通常,口頭で行う案内を,紙にメモをして渡す。 ○ 書類記入の依頼時に,記入方法等を本人の目の前で示したり,分かりやすい記述で伝達したりする。 ○ 比喩表現等が苦手な障害者に対し,比喩や暗喩,二重否定表現などを用いずに説明する。 ○ 知的障害者から申出があった際に,ゆっくり,丁寧に,繰り返し説明し,内容が理解されたことを確認しながら応対する。また,なじみのない外来語は避ける,漢数字は用いない,時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを,必要に応じて適時に渡す。 ○ 発達障害等により言葉だけを聞いて理解することが不得意な障害者に対し,具体的・視覚的な伝え方を工夫する。 ○ 事務手続の際に,役職員や支援学生が必要書類の代筆を行う。 (ルール・慣行の柔軟な変更の具体例) ○ 順番を待つことが苦手な障害者に対し,周囲の者の理解を得た上で,手続順を入れ替える。 ○ 立って列に並んで順番を待っている場合に,周囲の者の理解を得た上で,当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 ○ スクリーンや板書等がよく見えるように,スクリーン等に近い席を確保する。 ○ 機構敷地内において,車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 ○ 機構敷地内の駐車場等において,障害者の来訪が多数見込まれる場合,通常,障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。 ○ 他人との接触,多人数の中にいることによる緊張により,不随意の発声等がある場合,当該障害者に説明の上,施設の状況に応じて別室を準備する。 ○ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において,情報管理に係る担保が得られることを前提に,障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 ○ 試験の実施にあたり,障害の種類及び程度に応じて,実施方法等について配慮する。 ○ 成績評価において,本来の教育目標と照らし合わせ,公平性を損なわない範囲で柔軟な評価方法を検討すること。