国立高専機構からの
お知らせ

2025.10.3 (fri)

令和2年10月に発生した東京工業高等専門学校学生自死事案に係る第三者委員会の設置・運営に関する高専機構における対応について

令和7年10月3日

令和2年10月に発生した東京工業高等専門学校学生自死事案に係る
第三者委員会の設置・運営に関する高専機構における対応について

独立行政法人 国立高等専門学校機構

 令和2年10月に、東京工業高等専門学校(以下「東京高専」という。)の当時電子工学科に在学中の学生が亡くなられる大変痛ましい事案が発生しました。亡くなった学生のご冥福をお祈りするとともにご遺族にもお悔やみ申し上げます。
 この事案に関しまして、事実関係や背景を明らかにするための調査等を行い、学校運営及び学生指導における改善方策に関する提言を行うことを目的に、弊機構に第三者調査委員会(以下「第三者委員会」という。)を設置し、令和3年8月8日に第1回委員会を開催して以降、関係者への聞き取りを含め、計44回の会議を開催し、調査・協議を進めてまいりました。
 この度、調査報告書のとりまとめに至りましたが、同委員会の設置当時に設置要項の制定に遅滞があったこと、第三者性に疑念がある委員を選任・委嘱してしまっていたことといった、調査自体に影響を与えかねない事態がありました。また、このことに関連して、ご遺族に対して誤った説明等を行うなど、関係者の信頼を損ねる対応をしていたことを確認いたしました。加えて、ご遺族に不快な思いを抱かせる内容のメールを送付していたことも確認いたしました。このような対応について、深くお詫びいたします。
 第三者委員会の調査活動の有効性、また、同委員会における調査の中立性・公平性の観点から、社会に対してこれらの事実を明らかにすることが重要であり、ひいては、ご遺族のご要望に添うことになるとの判断から、弊機構としてこれらのことを公表することにいたしました。なお、近日中に本件に関する記者会見を実施する予定です。

1.第三者委員会設置要項の制定が遅れたことについて
 第三者委員会の設置を準備する過程において、弊機構よりご遺族に対し、設置要項案(ひな型)をお示しするとともに、「ご遺族にも確認いただきながら高専機構として決定していきたい」旨お伝えしていました。
 また、委員の人選や組織の構成などの調査主体に関して、ご遺族からのご意見を踏まえた調整を行いつつ、委員候補者についてはご遺族に面談いただいた後に、第1回第三者委員会を開催しています。
 このとき、設置要項(令和4年2月8日制定、令和3年8月8日適用:弊機構理事長裁定)が制定されているべきでしたが、委員確保の見通しが立ったことからも、当時の弊機構の判断で委員による事案の把握、聞き取り調査の対象者や方法の検討を一刻も早く始めることを優先したため、設置要項の制定前ではあったものの第三者委員会を開催することになりました。さらに、弊機構から「ご遺族にも確認いただきながら決定していきたい」旨お伝えしていたにも関わらず、そのことを組織的に共有していなかったため、結果的に設置要項の最終案をご遺族にご確認いただくことなく、制定していたことを確認しています。
 このような不適切な対応は、担当者間の情報共有や相互確認、上司への報告が不十分であったこと、また、ご遺族に連絡・確認しながら進めるという基本的な対応を怠った弊機構の責任です。ご遺族の信用を無くす事態になったことは誠に遺憾であり、お詫び申し上げます。

2.第三者委員会委員の交代があったことについて
 第三者委員会設置当初の委員の1名について、令和4年4月下旬、本事案発生時の東京高専校長及び令和4年度当初に着任した後任の校長と同じ職場で勤務していた時期があった事実が同委員からの申し出に基づき発覚しました。この申し出は事案発生時の校長が第三者委員会のヒアリング対象に決定した直後にありました。
 第三者委員会は当該委員の中立性に疑問があることから、委員へ辞任を促した後、同年5月下旬に同委員から辞任届が提出され、弊機構はこれを受理しました。なお、当該委員は当該校長へのヒアリングには出席していません。
 委員の選任にあたっては弊機構が作成した候補者リストに挙げた方、ご遺族からご希望いただいた方に直接もしくは職能団体等を通じ、就任を依頼していましたが、学識経験者の選任に困難を極めたため、弊機構より職能団体に委員候補者の推薦を依頼し、その推薦に基づき、ご遺族との面談を経て、当該委員に就任いただいていました。
 しかしながら、いずれの委員候補者も他機関が設置する第三者委員会の委員経験があったことから「就任するにあたり関係者との利害関係はあってはならないことをご自身が当然把握している」と当時の担当者に思い込みがあり、利害関係について口頭で簡易的に確認するに留まり、詳細な調査・確認を行わなかったことが、このような事態を招いた要因です。
 以上の通り、必要な調査・確認をすることなく、中立性の確保が求められる第三者委員会の委員として疑義がある人選を行い、その結果、ご遺族や他の委員の皆様との信頼関係を損ね、第三者委員会の調査の進行にも影響を与えたこと、併せて、第三者委員会の聞き取り調査にご協力いただいた学生や保護者の皆さんなどこのことでご不安を抱かれた方々に深くお詫び申し上げます。
 なお、上述の辞任に伴い、令和4年6月に委員1名を新たに委嘱し、第三者委員会としての調査を継続している中、この委員選任と交代による影響について、令和5年3月に委員会に意見を求めたところ、委員交代前には学生のヒアリングを終えていたこととともに、「利害関係に影響されることなく、聞き取りは公正に行われた」旨の回答を得ています。
 また、設置要項に定めるとおり、委員には職務上知り得た情報の守秘義務が課されていますが、当該元委員より辞任時に、守秘義務に関する誓約書をご遺族のご要望により提出いただいております。
 今後、第三者委員会を設置する場合には、委員就任時に守秘義務に関する誓約書を提出いただくようにします。

3.第三者委員会設置にかかる記者会見をこれまで実施していないことについて
 令和3年8月の第三者委員会の設置当初、ご遺族からは第三者委員会設置に係る記者会見の実施についてご要望をいただいていましたが、弊機構ホームページでの掲載(公表)のみとし、記者会見は実施していません。このことについて、ご遺族より改めてその理由について確認を求められた際、弊機構より、委員会へ記者会見の実施について相談させていただいた際の記録において、
・記者会見を行うのであれば委員会ではなく設置者である高専機構が実施するのが適当ではないか
・委員会が記者会見を行うとすれば調査結果の報告時に行うのだろう
との内容があったことに基づき、弊機構として「委員会が設置中の記者会見は行わない」とご遺族へご説明させていただいていましたが、第三者委員会(委員長)にこのことを確認したところ、第三者委員会の発言を弊機構の勝手な解釈により、お伝えしていたことが分かりましたので、ご遺族に対し、発言記録を添えて、弊機構から誤ったご説明をしておりましたことお詫びしています。
 弊機構としては、上記1及び2の件について、以前はホームページへの掲載により公表の上、報告書提出後に記者会見を行う意向をご遺族にお伝えしていましたが、文部科学省からご遺族のご意見、ご要望に沿って対応するよう助言を受け、再検討した結果、ホームページ掲載による公表(本掲載)に加え、記者会見を行うべきと判断しました。

4.高専機構幹部職員の不適切な発言について
 弊機構2名の幹部職員(事務管理職)からご遺族に対する不適切な発言(具体的には、①辞任した委員の後任を第三者委員会とご遺族が決定するにあたり「ご遺族が陰で動いていたのでは」と発言、②それについて謝罪文は出せないと発言、③ご遺族からの記者会見開催の要望に対し「今は実施したくない」と発言)があったことを事実確認しています。また、ご遺族からの問合せ等に対する弊機構担当者からの連絡が滞る時期があったことも確認しています。
 組織を代表して対応する然るべき立場の者が感情的になり、組織的な判断をせずにご遺族を軽視するような発言をしたことや真摯といえない対応をしていたことは誠に遺憾です。
 ご遺族に不快な思いを抱かせてしまいましたこと改めまして深くお詫び申し上げます。
 今後このような対応がないよう組織的な情報共有及び判断を徹底して参ります。

5.ご遺族への配慮に欠いた高専機構理事からのメール
 記者会見の実施にむけた準備のため、弊機構の理事等がご遺族と対面での話し合いを行い、翌日、当該理事からご遺族に対し送付したメールの中で「なお、昨日5時間お話を頂きましたが、集中力を保ちお話を続けることが難しいと考えます。これまでの状況をよく存じ上げている者からの電話ですので、現在でもそうなっていると聞きますが、基本30分以内でと考えております。」との記載があることについて、ご遺族から不適切な対応ではないかとの指摘を受けたことを確認しています。
 ご遺族の心情に寄り添った対応をすべきところ、このメールにより、ご遺族に不快な思いを抱かせてしまいましたこと改めまして深くお詫び申し上げます。
 今後は、弊機構役員及び教職員が、これまで以上にご遺族のお考えを十分に理解し、心情に寄り添い、きめ細やかな配慮を行うことができるよう、研修等を通じて意識を醸成してまいります。

6.今後の対応について
 弊機構では、国立高専の学生が自ら命を絶つという痛ましい事態が発生しないよう未然防止により一層取り組みます。また、学生が安心・安全な教育環境を維持していくためには、学生・ご家族との信頼関係を築きながら学校運営を進めることが重要です。いかなる場面でも、丁寧な説明・対話に努めるよう、国立高等専門学校機構本部はもとより各学校への周知徹底を図ります。この考えの下、第三者委員会を設置する場合の手続きも明確化していきます。併せて、今回の第三者委員会の設置・運営等に関して、弊機構として検証が必要だと考えており、対応してまいります。

東京工業高等専門学校の自死事案に係る第三者調査委員会設置要項


一覧へ戻る