卒業生インタビュー

「公益」の視点に基づいた社会づくりに貢献したい

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長

田中 邦裕

舞鶴工業高等専門学校 電子制御工学科 1997 年度卒

貴社の事業概況を教えて下さい。
高専在学中に創業し、2005 年に上場しました。レンタルサーバー事業から始め、その後サーバービジネスを手掛け、現在はクラウドビジネスを主体として、主にインターネットのインフラを担うサービスを提供しています。
起業に至る経緯は。
学生時代は WWW やブラウザが出はじめのころでした。コンピュータネットワークに非常に興味があったので、自分で学内ネットワークを構築し、サーバーを立ち上げたところ、学内を中心に広く利用されるようになりました。その後、利用の拡大にともなってトラフィックが増えたため、学校からサーバーの撤去を求められたのですが、その一方で「お金を払っても使いたい」というニーズもあったので、地元のプロバイダーの協力を得て在学中に起業しました。その後、1998 年の卒業とほぼ同時に高専の後輩と共に「インフォレスト」を設立、1999 年に「さくらインターネット」を法人化します。
経営者として心掛けていることは。
「自分は何をやりたいのか」を常に意識しています。「やるべきこと」は「やりたいこと」のために行うべきで、「やるべきこと」だけをやっていては人生の活路は開きません。
高専時代の学生生活で思い出に残ることがあればお聞かせください。
高専ではパソコンや電子工作など、小さいころからずっとやりたかったことができるので、授業だけでは飽き足らず、1 年のときから放課後も研究室や実習室に入り浸っていました。小さなころからの夢であった「ロボコン」に 4 回も出場できたことはいい思い出です。また、学校がインターネットに接続されたころ、ロボコンの全国大会で東京に行った際、部品調達のため秋葉原に行ったのですが、店頭のインターネット体験コーナーから、自分のホームページにアクセスできた時は、世界中と繋がることができるインターネットの凄さに、雷に打たれたような、人生最大の衝撃を受けました。
貴社は様々な教育支援活動を展開されています。
最近感じるのは「技術立国日本」を支える「デジタル」「IT」人材が少ないということです。ですから高専生をはじめ、既にいる理系学生をしっかり育てていくことが重要だと思っています。少子高齢化が進んだとしても、理系人材の割合が倍になるのであれば、テクノロジーによる生産性の向上によって、日本はもっと豊かになれると思います。
ソフトウェア協会会長などの役職も数多く務められています。
私が、利益の公平な分配や中長期的視点での経営を重視する「公益資本主義」を信奉していることから、ソフトウェア業界を中長期的な観点で見ることを期待されたのかも知れません。
今後の抱負や夢は。
中途半端な「IT 化」が日本を悪くしていると思います。スマホの活用も遅れており、IT に様々な制約がかかるため、日本の会社や社会はIT の恩恵を生かし切れていません。IT をフル活用しデジタル化の恩恵を皆が享受できれば、生産性があがって所得も増えますし、自由にやりたいことができます。弊社としてはそんな社会作りに貢献するため、「デジタル化」とそれを担う「スタートアップ」そして「地方」や「教育」の活性化、この 4 つのキーワードを日本に浸透させていきたいと思います。個人的には、社会を変えるために、車中心のインフラの変革にも取り組みたいですね。
最後に高専生へのメッセージを。
将来のために今を楽しんで欲しいと思います。将来のことは分かりません。高専生活の「今を楽しむ」こと。それが全てだと思います。

田中 邦裕

たなか くにひろ
高専在学中に創業。1999 年にさくらインターネット設立。現在はクラウドコンピューティングサービス業を中心に展開。ソフトウェア協会会長など多数の業界団体の要職を務める。