特別対談

対談者

株式会社日立製作所 取締役会長 代表執行役

東原 敏昭

独立行政法人 国立高等専門学校機構 理事長

谷口 功

「Society5.0」時代に輝く人材育成

高等専門学校制度の創設 60 周年にあたり、日本独自の「高専教育」の特徴や存在意義、グローバル時代が加速する中で「創造性」や「実践性」を兼ね備えた人材教育の在り方などについて、日立製作所の東原敏昭会長と国立高等専門学校機構の谷口功理事長に対談していただいた。

「Society5.0」時代に輝く人材育成

高等専門学校制度の創設 60 周年にあたり、日本独自の「高専教育」の特徴や存在意義、グローバル時代が加速する中で「創造性」や「実践性」を兼ね備えた人材教育の在り方などについて、日立製作所の東原敏昭会長と国立高等専門学校機構の谷口功理事長に対談していただいた。

社会への「貢献」を考える

谷口

高専の教育は、ご承知のように 15 歳で入学後、基礎から大学のレベルまで教育しつつ、「何のために行うのか」、「世の中にどう貢献するのか」、そして「社会にどう実装するのか」を必ずつなぎ合わせて考えさせるのが大きな特徴です。
高専は 60 年前の創設時から、当時多かった 55 人学級ではなく 40 人学級でスタートしましたが、それは一人ひとりの学生の特徴をよく見て、最も力を発揮できるように育てることが大きな理由でした。学生には若い頃から高い志を持ち、社会の役に立ち、「人から『ありがとう』と感謝してもらえるように」と言っていますが、そのためには「実践力」が必要ですし、基礎から応用までの「基本的能力」もないといけません。また、最近は技術だけでなく本当に社会に役立つのかを「判断する力」も重要になっていますから、大所高所から考える力、いわゆる「リベラルアーツ」の学習にも力を入れており、その感覚を持って欲しいと思います。
なお、日本では試験ができると「理解した」と判断しますが、実は、学習した内容を他人へ説明できるようになってはじめて本当に「理解した」と言えるのです。授業の 3 割以上実験・実習を行って「実践力」を持たせる高専教育こそが本質的な教育です。ですから「高専教育は日本の教育をリードします」と言い切った方が、日本の教育は良くなるのではないかと思っています。

東原

すばらしいですね。今、おっしゃられた「社会課題を解決する」はキーワードだと思います。社会課題として環境問題や少子高齢化の問題などいろいろありますが、それを「自分事」として捉えて、主体的に解決していく力、これが非常に重要だと思います。視座を高くし、「自分事」として捉え考えていくことは、人間教育としても重要なポイントです。自分の考えばかりに終始すると、社会課題も「他人事」に見えてしまいますので「自分事」とするには「共感力」を備えることが大切と思っています。
私は会社でも同じことを言っています。日立製作所は 1910 年の創業以来 110 年以上、基本的にものづくりの会社でした。最初の 5 馬力インダクションモーターから始まり、さまざまな製品を製造してきました。製品とテクノロジーの文化、すなわち「工場中心の文化」できました。しかし、デジタル技術の進展によって、ものづくりだけではなく、デジタル技術を用いて、「OT(オペレーショナルテクノロジー)」と「IT」と「プロダクト」を組み合わせて、顧客への課題解決を行う方向に変えました。
近年は環境やフードロス、少子高齢化の問題など、さまざまな社会課題が出てきており、決まった顧客との「協創」だけでは解決が難しくなっています。今、活躍できる人材は、「製品ができたから買って下さい」では駄目で、顧客は何を欲しがっているのか、何を求めているのかを理解しなければいけません。社会課題はどこに問題があり、どう解決しないといけないかを「共感力」を持って主体的に自分で考える必要があります。これは時代の大きな流れだと思います。
もう 1 つは日本もグローバル市場で戦っていかないといけません。日本の強みをもっと出していく必要があります。高専の教育は、日本の強みを伸ばし、世界中の課題解決で活躍できる人材の育成ではないかと思います。

工学は社会のすべてに関係する

谷口

工学はもともと社会を良くするための学問だったわけですから、そこをもう 1 回考えることが大切です。工業が農業や水産業と関係ない、ということは全くありません。工学を用いることで、今までとは違う新しい見方が可能になります。農工連携や医工連携といったように、工学は社会のすべてと関係があります。どうすれば本当に課題を解決できるかという視点を持てば、あらゆる分野に工学が必要です。

東原

いや、まさにそうですよ。工業、農業、漁業と言いますが課題解決の視点に立てば、そういう壁がなくなります。例えばフードロスの解決にはジャストインタイムで消費者に届けないといけません。そのために「生産者はどのくらいの数量をつくればいいのか」「漁業はどのくらいのジャストインタイムで届ければいいのか」と、課題から入ると農業や漁業との壁はなくなります。工業でも材料、加工、ものづくりというジャンルの壁もなくなっていきます。環境問題ではエネルギーの最小化や資源リサイクルなどの課題解決の視点に立てば全部の壁を越えて「つなぐ発想」が必要です。

谷口

九州に台湾企業の半導体工場が建設されます。半導体産業は、この 20 ~ 30 年で日本が弱くなってしまった感じですが、2022 年 2 月にこの話がぱっと出たことを受けて、九州の一部の高専ではこの 4月から半導体の授業を始めました。高専の良い点はこのように小回りが利き、スピード感を持って臨機応変に対応可能ということです。議論だけで 10 年もかかったら話になりません。

東原

そうですね。私も 1970 年に高専の 8 期生として入学しました。高専には 3 年間しかいませんでしたが、その間に旋盤などで実際に物を作らせてもらいました。英語教育も優れていて、外国人による授業や、LL 教室で英会話の勉強もできました。その 3 年間で、自分が知りたいことを学ぶ習慣が身についたのは人生の大きな財産です。特に内容の濃い矢野健太郎先生(元東京工業大学教授・専門は微分幾何学)の数学は「一生モノ」と思っています。

谷口

矢野先生の数学は東工大で学びました。私は高専出身ではありませんが、ある物理の先生の思い出を話しますと、問題ができず「20 点ぐらいかな」と思った試験がありました。ところが、返ってきたら 75 点がついていました。「先生どうしてですか」と聞きに行ったら「最初の仮定が間違っていますが、後の論理は全部合っています。最初の仮定が間違っていなければできたはずです。それを考えて点数をつけました」と。私は回答だけを見て「バツ」ではなくて、その過程を学ぶことも非常に大事と思いますね。高専の教育はそこをしっかり行っていると思っています。

一般教養を学ぶことの大切さ

東原

高専の学生は数学や物理などが好きなのだと思いますが、一般教養を幅広く身につけることも大事です。問題を解決するときには数式で示すと一番モデル化しやすいのですが、社会にはそれで解決できない問題がたくさんあります。そのときには類似する事例で説明できるといいと思います。歴史の中の教訓や社会生活の中の類似性などです。私はコンピューターの事業を担当してきました。フォン・ノイマン型のコンピューターの OS(オペレーティングシステム)は、どうつくられていて、どう動くのかを、みんなに説明するのに悩んだことがあります。例えば類似的な説明として、読書中に「宅配便です」と声が届きます。その時、読んでいたページに栞を挟んで宅配便を受け取りに行き、戻った後は栞の所から再び読み始めます。こうした「割り込み処理」がコンピューターの中で行われています、と。人間は本を読む優先度と、宅配便に出る優先度を決めています。同じことがコンピューターの中でも行われています。だから類似性から処理アルゴリズムを思い浮かべることができます。また、今ならスペイン風邪が起きた後の経済動向から、コロナ後の経済動向を類似性の中で各種予測をします。そういった意味で類似性は非常に重要だと思います。

谷口

学生には考え方を広く、いろいろな見方があることを、しっかりと持ってもらうことが大事です。STEAM 教育とか、アートなどの知識を持っていないと社会とうまくつながらない話になります。

「ロボコン」はプロジェクト管理

谷口

高専にはコンテストが数多くあります。あれは非常に大事ですね。別に何か教えなくても、予選に間に合わなかったら駄目ですから絶対期限を守りますし、チームで挑戦しますのでチーム内で説明できないとコミュニケーションがとれません。例えばロボットをつくる場合、重さ制限や予算の制限などがあります。その中で自分の能力を最大限に生かすにはどうしたらいいかを考えざるを得ません。コンテストにはそれらが盛り込まれていると思います。そうしたコンテストを通じた学びも高専教育のもう一つ大事な要素になっていると思います。

東原

私もテレビでロボコンを見ましたが、まさに一種のプロジェクト管理ですよね。プロジェクトの完成には、工程を立てて責任者を決め、予算内で抑えられるように管理します。しかし、必ずしも工程どおりとは限らず、失敗した場合にはプラン B を作り再度やり直すこともあります。その意味ではプロジェクト管理を体得するには非常にいい企画かなと思いますね。

谷口

5 月頃にその年のテーマが決まった後、夏までの約 3 カ月でロボットを完成させ、さらに本戦までに他のチームの成果を見ながら、どんどんレベルを上げてきます。外国の人に「17 歳の学生がやっています」と言うと、みんな驚きます。こうしたコンテストなどの良い点は大事にしながら、併せて新しい視点を盛り込んでいくことも重要だと思います。
なお、私はいつも「成功は失敗のもと」といいます。「失敗は成功のもとだが、成功に安住したまま5 年経つと失敗になる」と。それを常に意識することが非常に大事だと言っています。

東原

成功も失敗もうまく教訓にしていくのは非常に重要です。ロボコンはぜひ続けて頂き、色々な教訓から自己成長につなげて欲しいと思います。

高専は「ソーシャルドクター」を 育成する学校

谷口

先ほど「社会への貢献」について話しましたが、外国で「高専の教育の特徴は何ですか」と聞かれたら「我々は社会のお医者さんを育成しています」と説明します。「ソーシャルドクター」ですね。「メディカルドクター」は誰でも知っていますが、社会だって同じで困ったことが数多く起こります。そこを治す・病気にかからないようにする「社会のお医者さんです」というと、外国でもすぐに理解してもらえます。

東原

2055 年頃に日本の、人口は 1 億人を切ります。GDP もシュリンクし、人口オーナス的な問題は避けられないと思います。そうなると高専を卒業した人が将来戦う場所はグローバル市場になります。アメリカをはじめ、欧州、中国、アジアなどの社会的価値観や文化、歴史、宗教の違いなどをよく勉強し「日本人の発想だけでは通じない」ことを知るのが非常に重要だと思います。特に社会課題の中で価値観に直結するところです。グローバルに見てカルチャーギャップを理解する力が大切になってきます。ものづくりから顧客の課題解決、そして社会の課題解決という段階に進むと、日本人の価値観を超えて理解する必要があります。相互理解にはバックグラウンドが違う人たちと対話しながら進めることが必要です。
法律が非常に性悪説でつくられている国と、日本のような「お天道様が見ているから」という性善説の国との感覚の違いも含めて「ダイバーシティ&インクルージョン」を考えていくことが大事です。これからの高専生はグローバル社会でも活躍できる人材として育成していくことが非常に重要になってくるのではないかと思います。

谷口

日立グループは約 37 万人の社員のうち、約21 万人と半分以上が外国人ですよね。高専は残念ながら留学生が学生の約 1%しかおりませんで、そこを倍々ゲームで増やさなければいけません。新型コロナの影響もありましたが、やはり留学生の数は少ないと思っています。

「ルマーダ」を軸に世界展開

東原

日立という会社がものづくりから始まり、近年は「OT(運用・制御)」、「IT(情報)」、「プロダクト」を基軸にした会社に成長しました。約 8 年間務めた社長・CEO の時代に世界を見渡してみると、この 3 つを併せ持つ企業は非常に少ないと気づき、私はこれを当社の特徴にしようと考えました。
最も大事なのは、まず創業の精神や企業理念がベースにあり、R&D や調達機能、サイバーセキュリティー対策などは全世界共通の資産にします。その上で「ルマーダ」という IT プラットフォームに様々なソリューションを並べ、ショーケースから各国の地域特性に合うサービスを選び組み合わせてサービス提供していく戦略です。
私はこれを「自律分散型のグローバル経営」と呼んでいます。自律分散というのは「地域ニーズに合わせて顧客対応を行う」ことですから、各国・地域のカスタマイズは、その文化・歴史・価値観に合わせて実施していくものです。この「ルマーダ」の構想を、2016 年 5 月 10 日にシリコンバレーでローンチしました。

谷口

自律分散の考え方は分かりますね。高専も共通項を踏まえたうえで、各高専の特徴はきちんと生かして下さいという形です。共通項だけだと金太郎飴になりますから、北海道と沖縄、関東と関西の違いや特徴は大事にする。ただ、勝手に行うのではなく何が大事かをしっかりと認識した上で、それぞれの特徴を伸ばしていって欲しいということです。

東原

自律分散型のシステムでは、各地域の実情などに合わせて構築することが可能で、地域のお客様のニーズに迅速に対応できます。それから各地域の経済状況に合わせた対応が可能で、事業リスクの分散にもなります。また、段階的に地域を拡張することができるので、グローバル経営には自律分散システムが適しています。ですから高専も最初に設立した高専があり、高専のコンセプトを順番に拡張していくのも自律分散的な発想だと思いますね。

AI 時代の職種移動を考える

東原

近年、人生 100 年時代が来たと言われています。今後、日本の労働慣行の「入社後は 1 つの会社でずっと定年まで働く」という時代は、やがてなくなると思います。10 年ぐらいで別の会社に転職する形になるかもしれません。その時に再度勉強し直して全然違う業種に就職する人もいると思います。会社を 2 回、3 回と変えていく「ジョブの流動性」も次第に増えていくのではないかと思います。
2050 年頃の予測を見ると、人口はどんどん減る一方で、AI やロボットの導入が進みます。ルーチンワークは AI やロボットなどに置き換え、経営企画や製品プランニングなどに人を移す職種移動が必要になると思います。これらは 1 つの企業で対応可能な話ではなく、日本全体で考えて方向付けをする必要があると思います。

谷口

学生と共に教員も変わっていくことが必要と思います。企業に籍を置きながら高専に来て支援していただくことも考えることが必要かもしれません。すぐには変われない面もありますが、いろいろ議論して企業と共同で実施していくことが必要になってくると思います。リカレント教育を受講する方にも役立ちますし、教える側も学ぶことができます。世の中の動きは早いですからね。

東原

そうですね。だから 3 つの教育パターンを明確にするといいと思います。1 つ目は全国の高専の中で教え方がうまい先生がいれば、基礎教育科目をビデオで流して学生は何度も授業を受ければいいと思います。2 つ目は対話形式の授業が素晴らしい先生がいたならリモートで世界中の学生と対話する授業があってもいいと思います。3 つ目は「ロボコン」のようなプロジェクトを通じて学ぶスタイルに分けるのはどうでしょうか。それらによって先生方も大きく変わるのではと思います。

谷口

先生自身が意識を変化させていく点でも良いですし、学生のためにもなると思います。今のお話のように、1 回、2 回は担当の先生が対面でやってもいいけれども、基礎教育は一番教え方のうまい先生の授業を何度も受けられ、みんなが理解できるようにするのがいいかもしれませんね。

「とんがった人」の育成も大切

東原

「とんがった人」の育成も大事ではないかと思います。「とんがった人」は単純に現状を受け入れないわけです。「なぜ今のルールはこうなっているのか」と、15 歳の頃から考え、イノベーティブな発想を備えておくと、多分何歳になっても、どこの職種に行っても、生き抜いていける人材になるのではと思います。

谷口

国立高専は全国に 51 校ありますから、100人くらいの「とんがった」学生はどの高専で学んでもいいというようにして、特別な教育をするのも一つのやり方かも知れません。ただ、今の制度では必ずしも簡単ではありませんので、制度をうまく整えて実施していけば、今までとは違う人材が育つのではないかなとも思います。

東原

今回、デジタル田園都市国家構想が出され、「5G」で日本が全部つながりますよね。各地域では、地方の文化や産業、地方創生などがリンクしてくると思います。先ほど各地域の高専の特徴を生かすという話がありましたが、全国の高専共通で行うことと、その一方で各高専の特徴を伸ばすことがあると思います。ですから「5G」が整備されていくと、全国の高専で共通科目があったり、あるいは四国の高専では地域の文化や歴史を学ぶコースがあったり、何か上手に「教育の地方創生」ができればいいと思います。

「SDGs」の意味

谷口

地球規模の環境・経済・社会の調和を目指す「SDGs(持続可能な開発目標)」が注目されていますが、基本的に 17 の目標は、日本が今まで取り組んできたことだと思います。日本人は表現があまり上手ではないところがありますから、やっていることと目標との「ひもづけ」が明確でなかっただけで、外国に向けて「実際は様々な取り組みを行っています」と主張すればいいと思います。
ただ、実は SDGs で大事なコンセプトは「No One (Will Be) Left Behind(誰一人取り残さない)」で、これは「皆さんを大事に育てる」との意味だけではありません。「皆さんは一人ひとりやるべきことがあります」ということでもあるのです。だから、「裕福な人がやること」「能力ある人がやること」と他人事にするのではなく、一人ひとりの役割があることを意識して目標を達成するということも併せて教えていかないといけません。SDGs のコンセプトをしっかりと認識し、「目標達成」を単なる免罪符にしないことが必要です。

東原

全くその通りですね。企業側からしますと、今まであまり 17 の目標を意識していませんでした。日立は今、「社会イノベーション事業」を進めています。社会インフラをデジタル技術により、さらにインテリジェント化し、世界中の人々の「クオリティ・オブ・ライフ」を向上させるのが大きな狙いです。
今、従業員一人ひとりには、「今日、あなたは社会とどうつながりましたか。それを考えて下さい」と言っています。鉄道事業では、年間約 185 億人の安全輸送をしています。その中で「鉄道事業の設計をしています」とか「原価計算をしています」でもいいと思います。世界中で安心安全の鉄道輸送をしていることを常に意識して下さいということです。谷口理事長が最初に言われた「感謝される」ということですね。それが私は従業員のエンカレッジにつながると思います。

谷口

そうですよね。仕事はみんな社会と連動しています。「人を安全に運ぶ」のは関係する全ての部署で仕事する人がいなければできませんから、そこを明確に意識することが大切です。

東原

日本は「失われた何年」と言って、自信喪失している面があります。私は「GAFAM」の存在が強烈なだけで、それを除いた株式の時価総額は日本とあまり変わらないと思います。ただ、「GAFAM」がサイバー空間でのビジネスモデルを世界に先駆けて握ってしまって、その市場での評価分の差があるだけだと思います。ですから、次の世代は「ものづくり」の分野でもう 1 回挑戦していけばいいのではと思います。その意味で今後は、高専の実力が非常に注目されていくと思っています。

谷口

日本はそういう挑戦をしていく必要がありますし、自信を持って取り組めば可能です。日本人は大人しい面がありますから、もっと積極的に多様な分野にチャレンジすることが大事だと思います。社会的価値が変化していますので、産学がタッグを組み、新たな時代のニーズに応える人材を育成していけば世界をけん引していくことが可能です。一緒に取り組むことで、社会が発展し将来が明るくなるように頑張らせていただきます。大体結論が出たようですが、最後に東原会長から高専生や関係者の皆さんにメッセージを一言いただければと思います。

東原

高専は学びの場としては非常に素晴らしいところだと思います。大事な点は、知識はいくら頭に詰め込んでも知識です。社会への貢献はどうすればできるのかについて「自ら知恵を絞る」ことです。そこをぜひ学んで欲しいと思います。自分自身でしっかりと考え抜いて「いかに社会貢献するか」と具体的な行動に移していただくと、高専を卒業された方というのは、世界で非常に望まれる人材になるのではないかなと思います。ぜひ頑張って下さい。

谷口

本日は大変貴重なご意見を有難うございました。今後の益々のご活躍を祈念申し上げます。

(敬称略)

  • 東原 敏昭

    ひがしはら・としあき
    阿南工業高等専門学校 3 年次中退後、1977 年徳島大学工学部卒業、日立製作所入社。1990 年ボストン大学修士課程修了。その後、日立製作所代表執行役社長兼 COO、同取締役兼代表執行役社長兼 CEO などを経て現職。経団連副会長などを務める。2018 年レオナルド国際賞受賞。
  • 谷口 功

    たにぐち・いさお
    1970 年東京工業大学理工学部卒業、75 年同大大学院博士課程修了(工学博士)。02 年熊本大学工学部長、09 年同大学学長などを経て 16 年から現職。他に日本工学アカデミー副会長、日本化学会筆頭副会長などを歴任。日本化学会学術賞、電気化学会功績賞、日本分析化学会学会賞など多数受賞。