卒業生インタビュー

世の流れが激流か小川かを見極める

株式会社コロプラ 創業者・代表取締役会長兼チーフクリエーター

馬場 功淳

都城工業高等専門学校 電気工学科 1997 年度卒

貴社の現在の事業概況を教えて下さい。
国内外向けにスマートフォンゲームの開発・提供を行っています。位置情報ゲームの『コロニーな生活』から始まり、現在は『白猫プロジェクト』、『クイズ RPG 魔法使いと黒猫のウィズ』といった主力のタイトルをはじめ、ライブ配信に特化した『ユージェネライブ』などの新しいエンターテインメントを提供しています。また、投資事業にも注力しており、国内外のエンタメ企業や、BtoC 企業を中心に投資しています。
常に心掛けていることは。
人の考え方や常識、法律などは年々変化していきます。「経営者」としては、その時代の流れが小川なのか激流なのかを見極め、スタンスを決めることが大事だと考えています。小川に過ぎないのであれば、自分の主義主張を守ることも可能ですし、逆に立っていられないほどの激流ならば、変化を優先する必要があります。なお、私は「経営者」であると同時に「クリエイター」でもあります。クリエイターとしては、クリエイティブに関して「妥協しない」ということを大事にしています。
高専に進学された理由は。
進学先を検討していた頃、興味があった「ロボコン」で都城高専が活躍していたのを見て「すごい」と思ったのが大きな理由です。また、高専の寮に入れば、頻繁にあった両親の転勤のために転校する必要はないという考えもありました。
高専の学生生活で思い出に残ることがあれば教えて下さい。
ラグビー部に所属していて、5 年生のときに全国大会で優勝したのが思い出深いですね。都城高専には、優勝ボールが今も展示されています。部活動では、上下関係や組織論などを学ぶことができました。また、「プログラムコンテスト」に、スケジューラーとポケベルを電話回線で連動させ、予定時刻になるとポケベルに通知メッセージを送るソフトを出品し、審査員特別賞を受賞しました。作成時の年齢と時代を考えれば、高度な作品だったと思います。卒業研究では C で書かれた LISPの処理系を Java にコンバートする研究に必死に打ち込みましたが、この体験は後に非常に役立ちました。
2008 年にコロプラを創業された経緯は。
高専卒業後に編入学した九州工業大学の大学院修士課程時代に、PHS端末で定額利用プランがはじまったことに感動し、位置情報ゲームの『コロニーな生活』を開発しました。その後、携帯の約 6 割のシェアがあった NTTドコモが仕様に対応したことで爆発的にユーザーが増え、個人では設備の増設や問い合わせ対応が難しくなったことから『コロニーな生活☆ PLUS』の運用会社として「コロプラ」を設立しました。
高専教育への要望などがあればお願いいたします。
高専で 5 年間しっかり勉強すれば十分な実力が身に付きますが、高専に長くいると世界が狭くなりますので、高専出身であることを忘れないよう教育したうえで、大学編入をもっと拡大して欲しいです。経営学を高専で学ぶ必要はありませんが、デザインを学ぶ授業があるといいと思います。スマートフォンをみてもわかるように、デザインは製品開発と密接にかかわる重要なもので、科学ですから理系教育とも親和性があります。
最後に高専生へのメッセージを一言お願い致します。
狭い世界から飛び出して、自分の間口を広げてください。都会の雰囲気や環境は高専のそれとはまったく違います。また、一つの方法ですが、卒業後はすぐに起業するよりも、一度就職し様々な経験をしたほうが結局起業することになったとしても役に立つことが多いと思います。

馬場 功淳

ばば なるあつ
都城高専卒業後、九州工業大学情報工学部編入。大学院博士課程中退。2003 年個人で『コロニーな生活』開始。グリー等を経て 2008 年コロプラ創業。2021 年 12 月から現職。