卒業生インタビュー

個性と多様性を大事にする校風を今後も大切に

住友共同電力株式会社 取締役支配人

村上 弘

新居浜工業高等専門学校 機械工学科 1988 年度卒

現在の事業概況を教えて下さい。
住友共同電力は、愛媛・高知両県に火力発電所 3 カ所と水力発電所11 カ所を保有する電力会社で、グループ会社を含めると社員数は 400人程度です。本社のある愛媛県新居浜市に、住友が巨大財閥となる礎となった「別子銅山」がありますが、その近隣には多くの住友グループ企業が立地しています。当社は、そういった企業各社の工場等へ、電力や蒸気、火力発電所から回収した二酸化炭素ガスを供給しています。また、四国電力や新電力会社、日本卸電力取引所などに対する電力の供給も行っています。
海外勤務も含め特に思い出に残る仕事は何ですか。
大手プラント建設会社が中心となってマレーシアで実施された出力120 万 kW(60 万 kW ×2 基)の火力発電所建設プロジェクトに、20 代後半で派遣されました。発電所の建設から試運転、顧客への引き渡しまで、約 2 年間に渡るプロジェクトの全期間を担当したのですが、マレー系、中国系、インド系からなる多民族国家マレーシアでは、イスラム教を信仰するマレー系の職員達が礼拝に行くため集団で持ち場を離れてしまうなど、日本と現地の文化の違いを実感する場面に度々出会い、価値観が変わるほどの体験をしました。それが大変印象に残っています。
バイオマス発電も手掛けられたそうですね。
温暖化対策など時代の流れを受けて、神奈川県川崎市の臨海部に「川崎バイオマス発電所」を建設することとなり、40 代前半であった私は初代所長を命ぜられ、発電所の建設から担当することになりました。「川崎バイオマス発電所」は日本で初めて都市部に建設された都市型バイオマス発電所で、都市周辺部で発生する建設廃材から作られた木質チップや食品残査などを利用するものです。出力は 3 万 3000kW と、国内有数のバイオマス発電所です。営業運転を開始したのは 2011 年 2 月でした。ところが、翌月に発生した東日本大震災によって、東北・関東の広い範囲が電力不足に陥ったため、東京電力から当発電所に対し電力の融通要請があったのです。当時「川崎バイオマス発電所」では、夜間の稼働率を下げて運転していたのですが、要請を受けた直後から数年間に渡って 24時間フル発電を行うことになりました。震災による電力不足を解消する取組みの一端を担え、社会貢献ができたのではと思っています。
住友共同電力に入社された理由は。
新居浜市に隣接する西条市生まれでしたので、幼い頃から名前は知っていましたし、近所には勤務している人もいたので、もともと住友共同電力には親しみがありました。また、一人息子であった私を地元に留めるため、転勤のなさそうな電力会社を選んだ父の勧めもあり入社しました。ただ、結果的には 30 年余りの会社生活の 3 分の 1 は、地元を離れて海外や関東地方などで勤務することになりました。
今後の計画や夢を。
当社として初となる LNG 発電(出力 15 万 kW)を新居浜市に建設中で 2022 年内の操業を目指しています。発電だけでなく熱源となる蒸気供給も行うハイブリッドなエネルギープラントになります。今後、技術革新が進めばアンモニア・水素を燃料としたエネルギー供給事業への展開も考えています。
最後に高専生へのメッセージを。
最近、「多様性」という言葉をよく耳にしますが、卒業した新居浜高専には、県内外の様々な地域から入学する学生達がおり、また自由な校風で個性的な学生が多かったため「多様性」を肌で感じることができました。そういった「多様性」は卒業生の評価にもつながっていると思いますので、大切にして欲しいと思います。

村上 弘

むらかみ ひろむ
愛媛大学工学部を卒業後、住友共同電力に入社。マレーシア石炭火力建設プロジェクトや、川崎バイオマス発電の初代所長、住友共同電力技術部長などを歴任し現職。