卒業生インタビュー

芸術とエンタメの同居した作品で文化の針を進めたい

作曲家・編曲家

横山 克

長野工業高等専門学校 電子情報工学科2002年度卒

NHKの『クローズアップ現代』や『ファミリーヒストリー』、映画、アニメーションの映像音楽などで活躍されています。現在の活動の概況を教えて下さい。
映像に対する音楽の作曲を中心としています。ドキュメンタリーや映画、ドラマ、アニメなどの映像音楽のほか、「ももいろクローバーZ」をはじめとしたアーティストへの楽曲提供なども行っています。他に、作曲家アシスタントを育成したり、作曲に使用されるソフトウエア・ライブラリーなどの開発・プロデュースを行う会社の経営もしています。
映像音楽を作曲する上で、特に心掛けている点はありますか。
監督や脚本家、原作者には必ず世の中に向けて伝えたいメッセージがありますので、それらが伝わりやすくするお手伝いをするのが大きな役割です。33歳の頃、アニメ「ガンダム」の映像音楽を担当しました。世界観が深く、シリーズの歴史もあるので、当時の自分にはプレッシャーもありました。他国から武力で侵略されるという歴史を持つバルト三国の地政や文化、音楽やリズムなどを学び、それらに作品性との関連を見出し、文化を取り入れる意識の曲づくりに挑戦しました。それ以降、作品の背景までも深く意識した音楽づくりを行うようになりました。
そもそも作曲家を目指されたのはいつ頃からですか。
ピアノは3歳頃から習っていて、作曲家には4、5歳の頃から非常に強い憧れを持っていたように思います。中でも『天空の城ラピュタ』などスタジオジブリの音楽を担当した同じ長野県出身の久石譲さんの作品や、小室哲哉さんの作品に感激し「自分には作曲家になる以外の選択肢はない」と思っていました。
高専に進学された理由もコンピューターと音楽への興味からですか。
中学3年生の時、高専の電子情報工学科ではハードウエアとソフトウエアが同時に学べるということに興味を持ち進学を決めました。しかし、高専は音楽を学ぶ場所ではないので、高専の勉強と並行して、独学で作曲の勉強を続けました。電車で2時間以上かけて通学していたのですが、毎日この通学時間を作曲の時間に充てていました。高専の勉強はハードで「高専を辞めて音楽の専門学校に行くべきでは」と悩んだ時期もありましたが、高専を卒業した後、正式な音楽教育を受けるために国立音楽大学の作曲学科に進学しました。
世界を新型コロナ禍が席巻しています。音楽の役割は。
新型コロナや自然災害に対して、芸術は無力だという見方もあります。技術と音楽の両者の意見を持つ私は、音楽家でありながらその意見に同意する部分さえもありました。しかし、2020年春、欧州などで都市封鎖によって、音楽ホールや劇場が休館に追い込まれ、私を含め多くの人が心に大きなダメージを受けていたとき、その状況にあっても試みられていた芸術、特に音楽は人々を奮い立たせたり、互いの心を結びつけたりする役割を果たしていました。芸術の持つ力の深さを再認識した経験です。
今後の活動の計画や夢を。
日本をベースとしつつも世界中を旅し、いろいろな国の様々な人と関わりながら良い音楽づくりをしていきたいですね。特に芸術とエンターテインメントが同居した作品を通して文化の針を少しでも進めるような作品を作りたいです。
最後に高専生へのメッセージを。
世界中の様々なところから情報を集め、学び、目を向け、自由な発想で羽ばたいて下さい。それにはしっかりとした基礎知識と、自ら開拓する発想力が必要です。選択をするのは自己の責任である、という意識も大切です。

横山 克

よこやま まさる
国立音楽大学作曲学科在学中から作曲家として活動。卒業後は映画、アニメ、ドラマなどの映像音楽や、アーティストへの楽曲提供など幅広い分野ジャンルで活躍中。