卒業生インタビュー

世界の大海原で活躍日本郵船初の女性船長

日本郵船株式会社 船長

小西 智子

鳥羽商船高等専門学校 商船学科 2004 年度卒

現在のお仕事の内容を簡単に教えて下さい。
2017 年に外国航路貨物船の船長に昇格した後、すぐに陸上勤務となり、現在は、船上の DX を推進するチームで安全管理のデジタル化やデータ分析をする業務に就いています。なお、陸上業務においては、往々にして海上勤務の経験が必要とされることから、弊社では、船員の勤務バランスを調整しつつ、海上勤務と陸上勤務を交互に割り当てていく体制をとっています。私の陸上勤務も5 年目となり、船乗りの「潮気」もだいぶ抜けました。そろそろ海上勤務に戻るのかも知れません。
日本郵船初の女性船長です。船長の制服を着た時のお気持ちは。
「会社からの期待に応えることができた」という安堵感とともに、洋上において全ての責任を負う船長職の重要さを改めて感じ、気が引き締まりました。
外航船の場合、何ヶ月程度の航海になりますか。
平均で約 6 ヶ月、長いときには約8 ヶ月間の航海になります。8 ヶ月間の航海であれば、海上勤務を終えた後に 4 ヶ月間の休暇が与えられます。外航船は一度出航すると、その航海の間は出発港に戻らずに、世界各地に寄港して貨物の積み下ろしを繰り返しながら、最終目的港へと向かうのですが、長い航海の中では、陸地が全く見えない期間が 1 ヶ月以上続くこともあります。
長期航海では、船員各自のモチベーション維持やチームワークが重要です。
「どんなに小さなことでも楽しみ、普通の 2 倍喜ぶ」ことを海上勤務では心がけています。旅が好きなので、普通であれば訪れる機会がないような場所に寄港できるのも、そのような小さな楽しみのひとつです。なお、大きな外航航路貨物船であっても、乗組員の数はわずか 20 ~ 30 人程度です。文化も国籍も異なる乗組員が、狭い船内で長期間生活するとなれば、限られた人間関係を良好に保ち、円滑な意思疎通ができるようにして規律を維持することが、航海の安全には欠かせません。先輩の船長達も、乗組員と積極的にコミュニケーションを図ったり、誕生会やクリスマスパーティーなどを開催するなど、チームワークの醸成に工夫をこらしていました。
鳥羽商船時代で特に記憶に残っていることはありますか。
希望する研究室に入れず、別の研究室で卒業研究を行うことになったのですが、それまで「教わること」を学習だと思っていた私は「教わっていないこと」を追求する研究のスタイルに、知識の不足もあいまってついていけずに大変苦労しました。ただ、このとき苦労した経験は、現在の仕事にも生きていると思います。
高専教育などへの要望は。
海事技術に関する専門教育だけでなく、英語とコミュニケーションを学ぶ機会がもっとあるといいと思います。船内の共通語は英語ですし、コミュニケーション力は、船内の人間関係や雰囲気作りに役立ちます。高専生に限りませんが、問題解決力やデータ分析力といった専門的な力を持っているにも関わらず、コミュニケーション能力が足りずに、それをうまく言語化して他人に伝えられない人を見ると非常にもったいないと感じてしまいます。
最後に、後輩への応援の言葉やメッセージがあればお願いします。
私が高専生であった頃とは異なり、多様性が求められる現代では、学ぶべきことが昔よりも多いでしょう。ただ、少なくとも「今、懸命に取り組んでいることが、未来の自分の原動力になる」ということは言えると思います。やりたいことの「芯」がぶれないようにして、自分の選んだ道を歩んで行ってほしいと思います。

小西 智子

こにし ともこ
鳥羽商船を卒業後、日本郵船に入社。コンテナ船、LNG 船、自動車専用船などの経験を積み一等航海士に昇進。2017 年 4 月同社創業 132 年目で初の女性船長に就任。