卒業生インタビュー

さまざまな経験を積むことで人間性は磨かれる

日東精工株式会社 代表取締役社長

材木 正己

舞鶴工業高等専門学校 機械工学科 1970 年度卒

貴社の現在の事業概況をお聞かせください。
当社の主力は 3 事業です。ねじを製造する「ファスナー事業部」、それを締結する各種ドライバーや自動ねじ締め機、ロボットなどの「産機事業部」、各種流量計や検査システムを製造する「制御システム事業部」の 3 つで、新型コロナ禍でも大幅に伸長し、昨年度はグループ全体で過去最高の 405 億円の売上高を記録しました。これらに加え、2020 年から「メディカル新規事業部」を立ち上げ、次代のビジネス環境を見据えて育成していく計画です。
メディカル事業は次代への布石ということですか。
既存事業の 10 年、20 年後を予測しますと、それだけでは十分ではないと思います。今後は少子高齢化が進み、市場のパイも縮小しますので、開発した「生体内溶解性マグネシウム」を活用して製品化を進め、これらを軸に「メディカル事業」を早期に大きな柱の 1 つにしたいと考えています。
高専時代のことで印象に残る思い出があれば教えて下さい。
1970 年代は大学に進学できるのは限られた裕福な家庭の人だけでした。中学卒業後の進学では、地元に設立された「舞鶴工業高等専門学校」を選びました。舞鶴高専は一流の先生の授業が受けられることや、両親への経済的負担も少なく就職にも有利というのが大きな理由です。私は2 期生で、高専の 5 年間で「人生の友」と出会えました。将来の夢や些細な悩みも彼らと夜を徹して語り合った思い出があります。卒業して 50 年以上経ちますが、毎年 1 回は近況報告や情報交換をしており、高専時代の友人は、まさに私の財産です。
今後、どのような高専教育や人材育成が必要とお考えですか。
まずは高い技術力を身に付けることです。高専時代に学んだ技術や知識が技術者のベースになります。現在はグローバルにビジネスを展開する時代です。語学力を身に付け、世界市場で戦える技術者に育成して欲しいと思います。我々が求める人材は、企業のルールをその通りに実行する人ではなく、企業の中でイノベーションを起こせる人です。そのためには高専で即戦力に近い実践教育をしてもらえればと思います。留学制度やインターンシップ制度など、高専生に豊富な経験ができる制度を拡大していただき、社会性あふれる人材の育成を期待しています。
男女共同参画の推進に関連して、高専の女子学生を増やす取り組みをどのように思いますか。
少子高齢化が進む中、女性の社会進出や女性の活躍が日本経済を支えていくと思います。当社は女性管理職の登用や育児休業支援などにより「なでしこ銘柄 2022」(経済産業省など主催)に選ばれました。高専で考えれば寮の整備や設備の充実、奨学制度や女性技術者との交流など学びの機会創出が必要と思います。
各高専を超えて高専卒業生が連携する「高専人会」が動き始めました。
学校単位の人脈だけでは物足りなさを感じていました。全国の「高専ネットワーク」を生かすのは非常に良いアイデアだと思います。経営者の立場で言えば、事業は世界が相手です。人脈を広げ、未知の分野に関心を働かせることが「知の探究」となり、それが企業のイノベーションにも結び付くと考えます。
最後に、高専生へのメッセージをお願いいたします。
一度きりの人生ですから思い切り明るく楽しく仕事や趣味に取り組んで下さい。熱意の高さは目標達成の実現度に比例します。また、「人間の価値は人間性にある」と考えています。その人間性はさまざまな経験を積むことで磨かれるものと思います。ぜひ頑張って下さい。

材木 正己

ざいき まさみ
舞鶴高専卒業後、日東精工入社。2005 年取締役ファスナー事業部副事業部長、06 年和光(株)社長、09年日東精工取締役ファスナー事業部長、10 年常務取締役などを経て現職。