卒業生インタビュー

常に新たなことに挑戦しより実り豊かな人生を

文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部計画課長

齋藤 禎美

石川工業高等専門学校 建築学科 1982 年度卒

現在のお仕事の内容を簡単に教えて下さい。
国立の大学や高専、それに大学共同利用機関におけるキャンパス環境の整備充実を支援しています。国立大学等全体の施設整備計画の策定や、予算の確保、その執行状況のチェックなどが業務の主な内容になります。
これまでのお仕事の中で、特に印象に残る仕事は何ですか。
1つは東京医科歯科大学企画課長であったときに手がけた、同大の「M&D タワー」整備です。「M&Dタワー」は、国立大学の建築物として初めて高さ 100m を超えた超高層ビル(地上 26 階、地下 3 階、延べ面 積 約 6 万 4 千 平 方 m) で あ り、完成まで約 6 年を要しましたので、思い入れがある仕事です。もう 1 つは東大施設部長時代に携わった「東京大学キャンパス計画室」での活動です。中でも本郷キャンパスは、東京大学創立時より育まれた歴史があり、その建築物や空間構造が醸し出す雰囲気には特別なものがあります。計画における大きな課題のひとつに、このように歴史的風格のある東京大学独特の景観と、教育研究の高度化に対応した最先端の施設・設備をどのように共存させるのか、というものがあったのですが、教員・職員がわけへだてなく議論を交わし、一丸となって取り組む姿が大変印象に残っています。私はこの経験を通じて、改めて本郷キャンパスの建築的・歴史的価値の重要性や、時代の要請と折り合いを付けつつ受け継いだものを未来へと継承することの大切さに気づくことができました。
環境や防災への施設整備の取り組みは。
2021 年度より、国立大学等における「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)」化の取組みに対する支援を行っています。政府は 2050 年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指していますので、可能な限りの支援を行っていきます。なお、従来から継続して行ってきた国立大学や高専等の施設の耐震化は概ね完了していますが、昭和 40 ~ 50 年代に整備した膨大な施設の更新時期が到来し、安全面、機能面、経営面で大きな課題が発生しているため、現在は、老朽改善に対する支援に力を入れています。
高専時代は建築とどのように関わっていましたか。
入学前から建物を見るのが好きでしたが、入学してからは建物本体だけでなく、内部にあるゆったりと寛げるような空間などを見て回るのが楽しみとなりました。特別な建造物よりも、私は普通の人々が集う公共の建造物や公共の空間が好きです。それがもっと美しくなれば、人の心も豊かになり、ストレスも少なくなっていくのではないかと思います。
尊敬する建築家は。
東大キャンパスの骨格を作られた内田祥三氏(元東京帝国大学総長)です。関東大震災で大きな被害を受けた東京帝国大学構内の復旧を主導し、「内田ゴシック」といわれるデザイン様式の建築物を数多く建設した方で、当時営繕部長を兼務されていたので、私たち施設系職員の先達でもあります。
高専教育などに関する要望は。
5年間をともに過ごすクラスメイトとは、とても仲が良くなりましたが、反対にいえば、仲良しグループだけの狭い世界しか知らない学生生活であったとも言えます。様々な価値観を持った人々と交わる機会や多様な価値観への気付きを与える教育がもっと必要ではないでしょうか。
高専生へのメッセージを一言。
常に新しいこと、興味のあることに挑戦して下さい。例え失敗してもコツコツと積み重ねていくことによって、より実り豊かな人生になると思います。

齋藤 禎美

さいとう よしみ
明石高専会計課から文部省(当時)に転任。東京医科歯科大学企画課長をはじめ横浜国立大学、筑波大学、東京大学などの国立大学施設部長を歴任し現職で活躍中。