卒業生インタビュー

ソフトウエアの地産地消で地方創生を目指す

フラー株式会社 創業者・代表取締役会長

渋谷 修太

長岡工業高等専門学校 電子制御工学科 2008 年度卒

貴社の事業概況を教えて下さい。
2011 年の創業以来、スマートフォンアプリにフォーカスした事業を行っています。当初は企業向けデータ分析サービス「App Ape」の提供が中心でしたが、最近では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の需要拡大により、大手企業や地方自治体といった顧客のデジタル領域全般の課題解決を支援する「デジタルパートナー事業」の比重が非常に高まっています。
経営者として日頃から心掛けている点があればお聞かせ下さい。
IT 企業にとって一番大事な経営資源は「人」ですから、会社のカルチャーや従業員のモチベーション作りなどを大事にしています。また、自著『友達経営』(徳間書店刊)にも書いたように、高専時代の仲間と一緒にいたいという思いで起業した会社なので、創業時から一貫して仲間を大事にしています。
高専時代の思い出やエピソードがあれば教えて下さい。
ゲームを作りたくてプログラムを勉強していた中学生時代に高専を知り、「ここだ」と思い進学しました。高専時代で一番印象に残っているのは寮生活です。生活を共にする中で、後に起業する友人を得ました。また、入寮中に発生した新潟県中越沖地震で命の儚さを感じ「一度きりの人生だから夢を追いかけたい」と思ったことが、起業のきっかけとなりました。
貴社は長岡高専や函館高専などと包括連携協定を結ばれています。
学生の技術的なステップアップをサポートすることや講演などを通じ、IT人材としての成長のみならず、起業家精神やキャリアの選択肢の多様性などを伝えたいと思います。
故郷の新潟県に「U ターン」されました。その理由を教えて下さい。
「故郷を元気にしたい」と考えたのが一番の理由です。地方はデジタル化の遅れや大幅な人口減少、就職先不足など課題がたくさんあります。4 年ほど前に新潟オフィスを開設しましたが、思いのほか入社希望が多く、驚きました。地方に職がないために東京で就職した方たちの中には、結婚や出産を契機に地元に戻りたいというニーズがあるのです。昨今の新型コロナ禍によってビジネスのオンライン化が進み、地方に人を呼び戻すため働く場所を創出することが、より現実的になりました。弊社では「U ターン」のみならず「Iターン」先としても人気の沖縄にオフィスを設けました。今後も別の地域に広げたいと思います。
「地域おこし」の具体的な事例はありますか。
約 100 万人が訪れる「長岡まつり大花火大会」の花火の打上げ時間や駐車場の情報などを提供するスマホアプリを作成していますが、同じアプリでも、新潟の人と東京の人が作るのではモチベーションが全く違います。その地域のデジタル化をその地域の IT 企業で行う「ソフトウエアの地産地消」が実現できれば、地方にも雇用・還元のよい循環が生まれると思います。
今後の抱負や夢を教えて下さい。
「地方創生」や「デジタル化」と、高専の相性は非常によいと感じています。地方に雇用を作ることで、高専生を呼び込み、いい循環を作りたいと思います。また、後輩の起業家たちを育てることも目標の一つです。新潟県も起業家が増えていますが、それを 100 人、1000 人と増やし、地域活性化を図りたいと思います。
最後に高専生へのメッセージを。
高専生は可能性の宝庫で、技術者、デザイナー、起業家など何にでもなることができます。「高専」という尖った学校に入学したのですから、就職で他人と同じ土俵で勝負するのではなく、もっと柔軟に人と違う道を選び、自分の「夢」を歩んで欲しいと思います。

渋谷 修太

しぶや しゅうた
長岡高専卒業後、筑波大学理工学群社会工学類編入学。グリーを経て2011 年フラーを創業。20 年新潟県Uターン移住。長岡高専や事業創造大学院大学の客員教授など。